History of the Friedr. Dick Knife
包丁の元となる刃物はおよそ60万年前に誕生しました。
非常に硬質な岩石の一種であるフリント (燧石)を加工し、道具として用いた石器が刃物の祖先です。紀元前1,800年頃の新石器時代の終わりまでになると、石器はさらに加工が進み、斧や鎗のように木製のハンドルに取り付けて使用できるよう、取り付ける穴が存在するようになります。
そして紀元前1000年頃には、スズと銅が混在したブロンズ合金が作られました。石器に比べ丈夫で、比較的加工しやすい材料だったので、刃物の材料はブロンズ合金が主流となります。
紀元前700年頃には、いわゆる鉄器時代が始まり、石器は完全に消滅します。しかしこれらの刃物は、調理目的と言うよりも、主に戦闘目的や一般的な多目的ツールとして使用されることがほとんどでした。ヨーロッパでは調理や食事を行うためのナイフは、ほんの数百年前に初めて登場します。そして現在のような調理用の包丁=キッチンナイフは、中世後期にフランスやイタリアの宮廷料理のために形作られていきます。
そして長年にわたるFriedr DICK社の歴史の一端をご紹介しましょう。DICK社は世界でも有数の235年の歴史を誇ります。 1778年、南ドイツのエスリンゲンの町で設立されたヤスリ専門の工房は、その後の1897年のシカゴと1903年のセントルイスの展示会での世界的な成功により、デイジーサウに本拠を置くまでの革新的な企業に成長しました。現在では様々な分野で活躍する刃物、世界的にも有名なヤスリ棒、研削機、台所用品をはじめとする品質の高い製品をドイツと世界に提供し、国際的な名声を築いています。
ディックの家系は、30年戦争の間にエスリンゲンに来たマーティン・ディックにさかのぼることができます。彼の偉大な孫、ヨハン・フリードリッヒ・ディック(1754-1817)は、ヤスリ工房でヤスリの目立ての見習いとして1778年に弟子入りしています。その謙虚さは様々な系列会社をまとめる現在でも変わっていません。現在のDICK社は、創業当時の小さな工房の志そのままなのです。
18世紀が19世紀に変わる激動の時期、ヴュルテンベルク州の農業地域は高度な発展を遂げています。様々な優秀な人材が、グローバルな産業ネットワークを作り出し、現代でも有名なダイムラー、ボッシュ、ヴォイス、ジーゲルなどの企業は、今日のように南ドイツでは、すでに重要な産業を生み出す原動力でした。
その中でDICK社の拡大は、ポール・フリードリッヒ・ディック(1851-1938)によって成し遂げられます。彼は商務評議員としてだけでなく慈善事業でも知られています。彼は産業革命の初期の1875年にDICK社を引き継ぎ、ドイツで最初の自動ヤスリ目立て機を考案しました。さらにポール・フリードリッヒ・ディックは独自の先見性を持って、様々な金属製品の製造に乗り出します。この中の一つがDICK社の代名詞にもなる、独創性を持った優れたスチール棒です。
1889年には、自社で生産する製品がさらに拡充され、ヤスリ、石目ヤスリ、スチール棒のほか、ナイフ、クレバーナイフ(なた)などの様々な道具類を生み出します。彼の作り出す製品の品質と機能性は、世の中に大きな価値をもたらし、DICK社の名声は不動のものとなっていきます。これらの成功の基盤は、19世紀半ばに既に築かれていました。
また、ポール・フリードリッヒ・ディックは製鉄所と協力して、刃物のための特殊合金鋼も開発しています。彼は特許を取得し、この鋼材を用いた画期的な新製品を作り、世界的に認められているブランド「F. DICK」を作り上げました。
1938年にポール・フリードリッヒ・ディックが死去した後、2人の息子が会社の経営を引き継ぎますが、最愛の弟が亡くなり、1950年から兄のポール・ディック・ジュニアが事業を単独で運営していきます。
しかし、時は第二次世界大戦後の時代、ポール・ディック・ジュニアは会社の再編に直面する大変な時代を過ごしますが、独自の技術を多数開発していたDICK社はこの不遇の時代も見事に乗り切っていきます。
その後、最初の社外最高経営責任者(CEO)ハインリッヒ・レイハウゼンは、就任後の15年間でさらなるマイルストーンを打ち立てます。彼は、エスリンゲンにおいて現代的で工業化された刃物の生産ラインを導入した後、バイロイトに子会社を設立し、米国に営業所を設立しました。彼による功績で非常に重要な生産拠点、研削技術の基礎を築き、現在の世界的なDICK社の生産・販売の基盤を作り上げます。
1989年には、ポール・フリードリッヒ・ディックの偉大な孫であるヴィルヘルム・ルーズが会社の経営を引き継ぎ現在にいたります。1997年には、生産部門と管理部門がエスリンゲンからデイジーサウに移り、8,000㎡という広大で最適化された生産プロセスを誇る工場から、世界へ素晴らしい商品をお届けしているのです。
Food Culture
Friedr DICK社の歴史のように、私たちの食文化は長い間に多くの変革を体験しています。そう、私たちの食文化は、社会の変化や科学技術の進歩に強く影響されるといえます。
まず私たちは、ヨーロッパの宮廷で食べられたものと、一般庶民が食べていたものを区別する必要があります。後者の料理はいわゆる地中海料理です。もちろん食生活や食文化は、農業、酪農、漁業などの地域的な違いに由来しています。この国や地域特有の郷土料理は、多くの現代料理の基礎を作り上げています。
クラシックなフランス料理はマリー=アントワーヌ・カレーメ(1784-1833)に多大なる影響を受けています。彼は19世紀最大のシェフとみなされました。中流階級の台頭と彼の功績により現代では、芸術としての料理は大衆も楽しむことが出来るようになり、もはや王族や貴族だけのものに限られなくなりました。
そしてホテルやレストランが開店し始め、このような時代の変化に新しいニーズを感じ取ったグランシェフ、オーギュスト・エスコフィエール(1847-1935)により、食文化が大きく華開くのです。彼は合理的でバランスの取れた食事に焦点を当て、ケータリングの分野に新しい技術革新を導入しました。
20世紀には、新たに定義されたヌーヴェル・キュイジーヌ=新しい料理と定義されたスタイルと、調理・食材の進化により食文化がさらに強化されました。食品調達、物流、国際観光が発達した現代の技術革新は、食文化のさらなる変化の道を切り開き、「美食」と「健康」が食文化を評価する基準となっているのです。
会社沿革
1778 | ヨハン・フリードリヒ・ディックはエスリンゲンにヤスリの製造工房を設立。 |
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1873 | ポール・フリードリヒ・ディックが会社を継承。刃物用スチール棒の生産の開始。 |
1878 | エスリンゲンに工場を建設(従業員20名)。最初のヤスリの生産機を導入。 |
1889 | エスリンゲンの新工場に移転(従業員100名)。精密時計用ヤスリから大型正方形ヤスリ(長さ45cm以上)などを制作。特殊工具・ブッチャーナイフ・クレーバーナイフの製造を開始。 |
1893 | シカゴの万国博覧会初出展。 |
1904 | セントルイス万国博覧会初出展。 |
1924 | バーデン=ヴュルテンベルク州にてWilh. Meeh GmbHを設立。金属丸鋸の生産開始。 |
1950 | ポール・ディック コマース年金基金の設立。 |
1977 | バイエルン州・バイロイトに支店を設立し包丁の製造を開始。 |
1988 | イギリス・バーミンガムに物流倉庫を設立。 |
1989 | ヴィルヘルム・リューズ(ポール・F・ディックの甥)が新社長に就任。 |
1991 | フランスの販売会社、F.Dick S.A.R.L.を創立。 |
1992 | アメリカの販売会社、Friedr. Dick Corp., U.S.A.を創立。 |
1992 | ノルトライン=ヴェストファーレン州・レムシャイトのvon den Steinen GmbH & Co. KG(回転刃製造メーカー)を傘下に収める。 |
1993 | スイスのバローベ (Usines Métallurgiques de Vallorbe)社と提携。ヤスリの製造をスイスに移転する。 |
1994 | イタリア・ライナテ/ミラノに営業所設立。Mercedes-Benz Lenkungen AGよりエスリンゲン・ツェルの土地を取得。 |
1995 | 藤寅工業株式会社(現:藤次郎株式会社)と提携。日本国内向けのオリジナルモデルの製造などを開始。 |
1996 | バーデン=ヴュルテンベルク州・ダイツィザウにおける産業財産の取得。 |
1997 | バーデン=ヴュルテンベルク州・ダイツィザウに本社・工場を移転。 |
1998 | BURGER KING社より新しい建設とリース。 |
1999 | EUエコアセスメントに従ったエコ認定取得。 |
2000 | Mercedes-Benz Lenkungen AGのためのエスリンゲン・ツェルの新しい建設。アメリカにて子会社Arrow Brand Realty設立。 |
2001 | 高級レストラン向シルバーウェア・ステンレス器物メーカーのPOTT社(ドイツ・ゾーリンゲン)の買収。 |
1988 | イギリス・バーミンガムに物流倉庫を設立。 |
2002 | ノルトライン=ヴェストファーレン州・レムシャイトにてSpontan_WRT GmbHを設立。 |
2006 | 高級レストラン向シルバーウェア・ステンレス器物メーカーのPOTT社(ドイツ・ゾーリンゲン)の売却。 |
2010 | 高度に自動化されたナイフ生産設備の拡大。最先端の技術を使用した近代化設備の導入。 |
2011 | バーデン=ヴュルテンベルク州・ダイツィザウの本社に太陽光発電や太陽光発電システムの設置。 |
2012 | 中国での営業所を設立。食肉産業および食品産業で使用する革新的なRFIDシステムを販売および配布するRFIDICK GmbHの設立。 |